大事は失ってはいけないもの
「なら、夏樹と友梨にいいものをやるから食べたらおじいちゃんの部屋においで」

とおじいちゃんはご飯を食べて部屋に戻って行った。
二人で顔を見合せた。
ご飯を食べた私たちはおじいちゃんの部屋に行った。

「食べたのか?」

「うんで何?」

と言うとおじいちゃんは立ち上がり、惜しい入れから大きな箱を2つ出した。

「何ですか?それ」

おじいちゃんは箱を床に置いて開けると浴衣が入っていた。

「おじいちゃんこれ?」

驚いたのは男の人用の浴衣だ。

「本当は今年雄大に着せようと思っていたんだよ。でももういないし夏樹着てくれ」

「はい」

と夏樹は少し泣き目になりながら言った。
するとおじいちゃんは部屋を出て行った

「私も夏樹に着てもらいたいな~」

「うん」

と頷く夏樹はゆーちゃんに似ていて、心臓が痛い。抉られるように痛い。
夕方になる。

「友梨着れた?」

「待って今おばあちゃんにやってもらってるから」

「うん」

「夏樹は着れたの?」

「慣れてるから」

そっか夏樹は500年くらい生きてるだもんね
浴衣も着物と同じようなものだよね。

「できたよ、友梨」

「ありがとう開けていいよ夏樹」

ドアが開くと夏樹は目を輝かせていた。

「キレイだよ、友梨」

「本当に?嬉しい」

こんな風にゆーちゃんが生きて居れば言ってくれたかな?

「友梨きっとゆーちゃんもキレイだって思ってるよ。」

私の気持ちを悟るように夏樹は言った。

「うん」

祭り会場は海の浜辺と隣の山の神社まで。
歩くと共に太鼓の音が大きなって浴衣を着てる人が多くなる。転びそうになる。

「あっ!」

その時夏樹が私の手を掴んだ。

「大丈夫?」

「うん」

「手繋いで歩こうか?」

「う…うん」

顔が赤くてなってるかな?
心臓がうるさい。

「フフッ」

と夏樹が笑った

「何?」

「いや、面白くてさ」

多分私の顔が赤くて笑ってるだろう。
風が優しく吹く。

「ねぇー夏樹」

「なに?」

「私まだ分からないの大事なものの区別がわかない」

「…大事なものね~」

と呟く夏樹に私は

「夏樹は大事なものってなに?」

「俺の大事なものは『今』かな」

「今?」

「そう『今』ここに俺はいて。友梨が居てお祭りに行く今かな」

「今か」

私は夏樹の言葉に感動した。
祭り会場に来ると甘いリンゴ飴の香りと焼きそばの匂いがする。この匂いに昔から変わらない。

「行こうゆーちゃん」

間違えて、ゆーちゃんと夏樹をゆーちゃんと言ってしまった。

「ごめん!」

でも、夏樹は驚いていない。

「うん行こう」
< 6 / 8 >

この作品をシェア

pagetop