完全無欠⁈ お嬢様の執事
「ちょっ、ちょっと待ってよ!
私、執事つきお嬢様になんて…」
「…いやだった? 彩ちゃん…」
間髪入れずに、美優が涙目になる。
(うっ……。ヤバイ……)
この母の性格は、決して計算している訳ではない。
純粋な天然なのだ…。
彼女も康介と同じ歳だが、見た目は若く、乙女チックな服装がなんの違和感もなく、似合ってしまう。
ちなみに、康介の店の看板ウエイトレスだ。
「彩ちゃんにはいつも家の事、全部任せちゃってるし、少しでも不自由なく暮らして欲しいの…。
それが、康ちゃんと私の願いなのよ。
だから…、だから…」
「わっ!泣かないでよ、お母さん!
うそうそ! 嬉しい!嬉しいよ!
執事つきなんて、夢みた〜い!
ね!だから、泣かないで〜」
彩は慌てふためいて、隣に座る美優の手をとる。
「…本当?」
小首を傾げて彩を見つめる。
「うん!
ありがとう! お父さん、お母さん!」
(…この仕草に弱いのよ、私)
彩は、表面は笑顔を取り繕うも、内側でがっくり項垂れた…。
こうなってしまったら、先程から康介と美優の朝食の世話をしている「誉」という人を執事に認めるしかない…。