かけがえのないもの

君がスキ

少し甘えた後に、生徒が来たからゆっくりと離れていく
惜しいと言わんばかりに体が重い


「晋弥兄ちゃん、頭痛いから寝ていくね」

「風邪か?気を付けろよ、面倒だからな」

「はいはい、」



もっと晋弥兄ちゃんと話してたかったけど、女子生徒が手当されているのを見てられなかった


──醜い、嫉妬心が


目頭が熱くなって少し泣きそうになれば気をまぎらわそうと布団に潜り込んで、目を伏せる



「好きだよ、晋弥兄ちゃん」


聞こえない様に小さな声で呟いた想い、きっと聞こえないだろう
だけど少しだけ、聞こえる期待を込めているなんて


うとうとと眠気が理央を向かって来た、抗いもせずに理央は眠りに付いていった




晋弥は煙草を胸ポケットから出せば口に加え火を付ける
吐き出した煙が宙に舞って、少し綺麗だなんて柄にもなく思っていて


「下校時間、ギリギリまで寝せてやるか」


理央が少し心配になって立ち上がりカーテンに手を掛けた瞬間に聞こえた声


「好きだよ、晋弥兄ちゃん」



時間が止まった気がした、いつもより少し甘い声で晋弥の名を呼ぶ理央
ずっと側にいて育てて来た妹が自分に恋心を持っていたなんて



伸ばした手を引き戻せば、自分の顔が少しだけ熱くなって自分の気持ちに気付きたくないと言わんばかりに灰皿で煙草を消した後窓を開けて目を伏せた



続く
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