チャンスの神はここにいる

衣装を持って
緊張で返事もできず
目線をキョロキョロ泳がせてると

「遠藤さんだ!」
明るい声が廊下に響き
その隙を狙って私は離れる。

「先ほど楽屋にご挨拶に伺ったブループラネットの井浦亮平です。遠藤さんのファンなんです。お会いできて嬉しいです」

私とスキンヘッドの間に無理やり入り込み、憧れのまなざしで遠藤を見つめて握手する。

「あぁ……」
グラドルのおねーちゃんに声かけてる場面を見つかって気まずいのか、軽く返事をして逃げたいような表情をする遠藤。

「今日は遠藤さんの目の前でネタをやるので、緊張と不安でいっぱいです」

ブンブンと大きく握った手を振り、相手を圧倒する亮平君。

「頑張れよ」
ボソッと小声でつぶやき
亮平君の手を乱暴に払って
遠藤は背中を向ける。

よかったー。

ヘナヘナと崩れそうになってたら

「弱小事務所からよく出てきたな」

明るい声を私達は背中に浴びる。

ちゃんごらす
デブキャラ鈴木。

金髪にあごひげ
細い目が爬虫類的で不気味。

相方の登場で気を大きくしたのか
再びスキンヘッド遠藤は振り返り
ニヤリと笑う。

「よろしくお願いします」
低姿勢で亮平君は大きな身体を小さくし、背中を丸めて頭を下げる。

「おまえらさーうちの事務所の【コリアンダー】と、キャラ被ってるし」

鈴木が亮平君の頭をコンコンとグーで叩く。
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