チャンスの神はここにいる

柔らかなホワイトムスクの香りが私を包む。

「純哉君」

「……泣け。ただし声を出すな」

そんな無茶な事を言いながら
俺様大魔王は私を優しく抱きしめる。

いつもの上から目線の態度とは真逆に
大切に
優しく抱きしめる。

「亮平に『おめでとう』って一番に言いたかったんだろ」

私は純哉君の胸の中で大きくうなずいた。

「亮平も俺もそれは一番わかってる。だから今はガマン」

大きな手が私の髪を撫でる。

「お前と亮平がデキてるってバレると、色んな意味でマズい。お互い大切な時だから、もう少し頑張れ」

「……自信ない」

「てっぺんとるんだろ」

いつも亮平君と言ってる言葉を純哉君から聞き、大道具に隠れた暗がりの中、そっと顔を上げると純哉君は優しい顔をしていた。

「お前なら頑張れる。お前が頑張ると俺らも頑張れる」

「純哉君……」

「公表できる時は必ずくる。俺達だってまだ初戦勝ち抜いたばかりだし、これからまだ長い」

「うん」

「よし。落ち着いたら改めて亮平に『おめでとう』を言えばいい」

軽く背中を叩かれ
純哉君は私の身体をゆっくり離して、私達は大道具の陰から脱出。

亮平君も咲ちゃんも視界から消えていて
スコア中西さんがスキップしながら
亮平君の控室に嬉しそうな顔で入って行った。

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