チャンスの神はここにいる

「入るぞ」

狭い2人の間を割り込みながら
純哉君は部屋に入り
カーテンを開け
大きく伸びをしてから

「反省会を始めよう」

メガネを人差し指でクイッと上げ、サラリと言う。

あの……午前4時半なんですけど。

パジャマの下がノーブラだった事に気付き、私は胸を押さえながらGUで買った安いパーカーを上にはおり、ストンとベッドの上に座る。

「今日のメグちゃん。よかったよ」

亮平君は私の隣に腰を下ろし
頭を撫でてくれた。

犬になった気分。
ワンってほえたい。
甘噛みしたい。

「そんで、どうして場所変えした?」

純哉君は床に座ってテレビを点け
慣れた手つきで録画していた今日の番組を探し出し、私に聞く。

ひな壇の事だな
上段のセンターに移動したのがバレたか

鋭いわ。

「えっと……」

スキンヘッド遠藤のツルの一声だけど

言いずらい。

亮平君の手が私の肩を抱き

優しく「素直に言って」って言うから

素直に「ちゃんごらすの遠藤が……席替えしたらって言われて」モジモジとそう答えると

「あいつメグちゃん狙ってる!」

亮平君は立ち上がり
大きな声を出し
身体を震わせ
おーまいがー!……って雰囲気

『素直に言って』って

自分で言ったくせに。


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