チャンスの神はここにいる

「ゲームとか鉄子とか、共感できる物を得意にしろ」

「鉄道って共感できるの?」

「オタク系アイドルは需要がある」

そういえば
うちの事務所の萌香ちゃんもオタク系アイドルだ。

「一位になって、アシスタントの座も夢じゃない」

アシスタント……咲ちゃん。

無自覚で溜め息をすると
亮平君が心配そうに私を見る。

「あ、ごめんなさい。うん。頑張るよ。ブルプラには負けないから」
背筋を伸ばして強がり言うと
純哉君は満足そうな顔をした。

「亮平出るぞ。店に行って荷物取りに行こう」

「荷物?」
そういえば2人手ぶら。

「先輩の店で飲んでて、舞台用のスーツをそのまま置いてきた。唯一の大事な舞台衣装。一着作らないとマズいかなー」
純哉君は亮平君に早く出るよう急かすけど、亮平君は立ち上がりもせず、私の手をつかみジッと顔を見た。

「メグちゃん」

「何?」

「何かあったろ。言ってみて」

グサリズキリ。
何でわかるの?

「何にもないよー。ただの寝不足……」

「隠し事なし」
いつもの優しい声ではない
強く厳しい声を出す。

こんな声も出すんだ。
委縮され
肩を丸めてると

「もう少し言い方があるだろ」
丸く収めるように純哉君が私を庇う。

変だね
いつもと逆だね。

でも
本当はこうなのかな
亮平君の方が芯が通っていて男らしくて
純哉君の方が繊細で優しいのかなって

亮平君に威圧されながら
そんな事を考える。
< 125 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop