チャンスの神はここにいる

汗臭い身体が
スキンヘッド遠藤のポロシャツ越しに私に密着するけど
今は本番中。
下手な動きはできない。

大事な大事な
亮平君と純哉君の出番だもん。

真剣に見ていたら

お尻に不思議な感覚が
ザワザワと広がった。

遠藤が私のお尻を触ってる。

知らん顔で
亮平君達を目で追い
隣の席の女の子に『あいつらクソサイテー』って言いながら

私のお尻を触ってる。

小刻みに離れようとするけれど
しっかり指先に吸盤でもあるように、遠藤の指は私のお尻をいやらしく触る。

寒気がする
吐き気もする。

声は出せない
不審な動きも出せない。

「やめてください」
テレビ用の笑顔を見せながら、はっきり小声で言うけれど

「はぁ?聞こえないしー」って言われてしまう。

手が後ろから前に伸びる。

太ももにドクロを巻く蛇のよう。

嫌だ……怖い。

じわじわと手が上に移動

みんなの笑い声が聞こえるけど
肝心のネタが頭に入らない

「弓矢がピヨーンと飛んできたんですよー」

「ないわ!」

生き生きとした2人の声が、今日の成功を確証していた。
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