チャンスの神はここにいる

バイトが終わる頃

駆け付けたのは一人の青年。

柔らかそうな髪を揺らし
Tシャツとジーンズ姿で
『まだ大丈夫?』って私に聞いたのは

若手お笑い芸人。

マツキヨで生理用品を買う彼だった。

彼は私の顔を見て「あっ!」と声を出す。

覚えてた?

「マツキヨの人だよね。あの時は教えてくれてありがとう。かなり助かりました」

想いを込めて彼は言い
私に頭を下げる。

「それはよかった」

「いやホントに助かった。先輩に渡したらさ『合格』って言われちゃった」

ニッコリ笑う笑顔が可愛らしい。
この人
いくつなんだろ。
私と同じくらいかな。

人懐っこいその笑顔で、誰もが心を許しそう。
そんな雰囲気が印象的だった。

「ご注文は?」

「うん。ガッツリ食べたいけど……財布の中が寂しいから……」

心細い事を言う。

ここで会ったのも何かの縁
もう会う事もないだろうって思い

「おまけするね」と、私は【増量から揚げ】を注文しサービス。

見知らぬ人におごる立場でもないんだけど

自分より下のランクの人をを見ると
気の毒に思ってしまうという。

自分の方が気の毒キャラなんだけどね。
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