チャンスの神はここにいる
ガマンだ。
ガマンガマン。
ブルプラのネタが終わるまでガマン。
また変な声が入って
2人に心配かけたくない。
顔をギュッとしかめて
いやらしい手つきに負けないよう、口の奥を噛む。
負けるもんか。
2人は私が守る。
遠藤の人差し指が足の付け根をクルクル回す。
もうネタもラスト近い。
あと30秒頑張ろう。
泣き笑いの顔でひな壇から見ていると
「お前いいかげんにー」と、亮平君は動きを付けて私の方を見て
彼の動きが固まる。
わかったのだろう
いや
以前の放送を見た時から
何か感じていたのだろう
ネタをやってる芸人が
一番やってはいけない事。
ネタの最中
素に返り
ネタを飛ばす。
「突拍子もないって、俺の事?」
純哉君が私から目を離そうとして、亮平君の肩をつかみ、目で何かを訴えるけど
亮平君の目は丸く固まり
身体は微動だにせず
亮平君の頭から
ネタが飛んだ。
彼は漫才師として
絶対やってはいけない事をした。
この大事な場所で。