チャンスの神はここにいる
局が用意してくれたタクシーに乗り
自分の部屋に戻り熱いシャワーを浴びる。
いつもなら
こちらの都合など
時間など関係なく
ドヤドヤと純哉君と亮平君が乗り込み、狭い部屋を占領する。
純哉君はポカリを飲みながらテレビの横に座り、今日の放送を最初からチェックしダメ出し。
亮平君はベッドに座る私の隣に腰を下ろし
手など繋ぎながら
純哉君のダメ出しにも負けず
笑顔でテレビを観て
自分たちの出番になるとストンと私から離れ、真剣な顔で画面を見つめる。
その横顔が好きだった。
二人の会話が好きだった。
今日は私ひとり。
狭い部屋が広く感じる
夏の終わりの空気が、ひんやりとシャワーを浴びた私を包む。
せっかく
グラドル総選挙10位に上がったのにね
きっと純哉君は
私のドラえもんの真似を見直して
鼻で笑うか
無視してスルーするか
どっちかだろう
そして亮平君は
『何をしてもカワイイ』って笑うんだろうな。
今はひとり
私はベッドの上に横になって
そんな事を考える。
亮平君
スコアさんの説教終わったな。
純哉君
今、何を思っているのだろう。
連絡しよう
電話しよう純哉君に。
亮平君は悪くないって言おう
私が亮平君の注意を惹いてしまい
2人に迷惑かけたって言おう
身体にスイッチが入り
ガバリと起き上がると
ドアがノックされる。
「メグちゃんごめん。俺」
力のない亮平君の声が聞こえ
慌てて私は扉を開くと
着替えもせず
舞台衣装のスーツ姿のまま、荷物を持って大きな身体の亮平君が部屋になだれ込んできた。