チャンスの神はここにいる
「メグちゃん?」
身体にかかる亮平君の重さが消えてゆく。
「何を言ってるの?」
不思議そうな顔で私を見るけど
もう
迷惑かけるのは嫌。
「別れた方がいいんだよ。このままだとダメ」
「ダメって何?」
「私の事が気になって、亮平君がネタを忘れる」
「それは自分の問題」
必死になって亮平君は言う。
「お互い集中できない。マイナスになる」
「俺の存在がメグちゃんのマイナスになってる?」
今までに見た事ないほど驚いた顔をして、亮平君は自分の足でふらつく身体を支え私を見る。
「私は……」
「そこ、正直に言って。本気で俺がメグちゃんのマイナスになってるんなら……俺から身を引く」
正直に言えないよ。
顔を下に向け
黙っていたら優しく頭をポンポンって叩かれた。
「それが答?」
どうして
こんな時も亮平君の声は優しいのだろう。
「俺が甘え過ぎてた。ごめん。メグちゃんにも純哉にも迷惑かけた」
違う……。
「俺、メグちゃんが大好きでさ。ごめん……普通の友達になろう。あ、友達にはなれる?嫌ならいい」
頭の中がガンガンする。
「帰る。もう来ない」
目の前の空気が動く
亮平君の気配が遠ざかる
私は何も言えず
何も動けず
ただ
息をして立っているだけ
その間
静かにドアが開き
目の前に立っていた
大切な
大好きな人が去って行く音がした。