チャンスの神はここにいる

そう思うと
膝の上から純哉君の頭を外しずらい。

どうしようか困っていると

「メグちゃん……」

小さな声が膝の上から聞こえた。

メグちゃん?
こいつ寝ぼけてる?

初めてじゃない?
私の名前呼んだの。

いつも『おい』とか『お前』じゃん。
証拠残したかった。
動画動画。

楽しくなって
カーテンの引かれた薄暗い部屋で「なぁに?純哉君」と、私も営業用の甘い声で答えると


「……好きだよ」


静かにそう言い


また

純哉君は安心したように

眠ってしまった。


私は声も出ず
幻のような
一部始終に息が止まる。

何ですって?

いや……聞き間違い。
絶対聞き間違い。
もしくは新手の悪質な嫌がらせ。

後から
『調子にのってんじゃねーよ。嘘に決まってる』って言うんだよね。
いつもの冷たい顔で
そーやって言うよね。

強く願って
泣きそうな不安な顔で
膝の上の純哉君を見つめると

彼は幸せそうに眠り

亮平君は背中を向けて
私から離れて眠っていた。




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