チャンスの神はここにいる
その夜。
バイト代が入り
ネクタイ売り場で悩む私。
ファッションビルの一画
値段がそんなに高くなく
色が綺麗で人気のデザイナーブランド。
これから売れる若手ブランドを
これから売れる若手芸人が着ける。
いいねいいねー。
ひとり満足し
ニンマリ不気味な私。
散々悩んでから
細めで光沢のある
渋い黄色と赤のネクタイを2本手にする。
色が綺麗だな
テレビ映りがよさそう。
赤が亮平君で黄色が純哉君かな
背が高くて顔がいいから
どっちでも似合いそう。
2人の顔を思い浮かべてから
朝方の純哉君の顔を思い出す。
安心しきった
甘えた寝顔。
『好きだよ』
ボソリと聞こえた声。
違う違う。
私の事じゃない!
絶対その想像は違う!
頭から追い出そう。
結局あの後
純哉君を起こさないように
手を引きつらせてクッションをつかみ
静かにクッションを私の膝の代わりにして純哉君の頭をのせ、私はベッドに移動する。
最初から私はベッドで寝てましたー
そんな感じでごまかそう。
2人の寝顔を上から見てから
一気に疲れ
私はまた眠りにつき
次に目を覚ました時は
亮平君が目の前にいて
「帰るね。今日はバイトだっけ?俺達は営業だからまた連絡するね。遅刻するなよ」
頬を優しく触る亮平君。
その後ろで
「顔がむくんでるぞ」と、眼鏡をキラリン光らせ言う純哉君。
かっわいくない男。
だから
そう
きっと私の悪い夢。
さて
ネクタイ買ってこよう。