チャンスの神はここにいる
どちらともなく
手を繋ぎ
ゆっくり歩く。
クシャミをひとつすると
「風邪ひく」って大騒ぎしながら、亮平君は自分の上着を私にかけてくれた。
あったかい
亮平君の香りがする。
「夏も終わるね」
繋いだ手を一度外され
私は肩を抱かれる。
「最近仕事が増えて。嬉しいけど、あまり会えなくてゴメン」
「明日スタジオで会えるよ」
「2人きりの話」
かぷっと耳をかじられた。
「食べないでね」
冗談で言うと
「あと二週勝ち抜いたら食べる」
本気で言われた。
「二週勝ち抜いた日の夜。純哉抜きで泊めてくれる?」
重みのある声に緊張してしまう。
やっと
その日がやってくるのか。
「……いいよ」
「ありがとう」
あらためて
こんな話をすると緊張してしまう。
「約束だもん。もう俺様ドS大魔王も怒らないよね」
明るく言うと
「俺様ドS大魔王?」
しまった
私が心の中でそう呼んでたんだっけ。
亮平君は大爆笑。
「ピッタリでしょう。営業用の王子様とはゼンゼン違うもん」
ブンブン言うと
「純哉はドSじゃなくてドM」
ポソリと言われた。
ん?
立ち止まって顔を見上げると
「アイツがドMで俺は最低のドSかも」
寂しそうな声が気になった。