チャンスの神はここにいる
「面白いは面白いんだけど……」

目の前で仁王立ちになってる男が怖すぎるので、爽やかワンコロに顔を向けて私は語る。

もう縁もゆかりもないだろう
正直に感想を言って
とっとと帰ろう。

「内容を詰め込み過ぎてる。ツッコミが早い。キレのよい漫才なのか、ダラダラテンポの漫才なのか途中からわからなくて、観ていて気持ちが悪い」
素直に言うと
亮平君は何度もうなずき真剣な表情。

「素人だからゴメンね。他の人に聞いたらまた違う意見だと思うよ。ネタは面白かった。もっと絞ったら……」

「わかった!」
亮平君の相方である、怖い男が鋭く叫ぶ

彼は眼鏡をキラリン光らせ
薄い唇に笑みを浮かべ
怪人オーラを出しながら私を見下ろす。

喰われそう。
魔物か?お前は。
顔が綺麗だから迫力増量。

「ネタを作り直す。亮平はこいつを送ってから、俺のマンションに来い」

そう言って眼鏡男子は
嵐のようにブランコの近くにあったチャリで爆走する。

早い……やっぱ魔物。

ぼんやりと見ていたら

「それ俺の自転車!」

亮平君が叫び
少し後を追うけれど無理とわかり
あきらめて私の顔を見て

「歩いて送るね」って笑ってくれた。

一日の疲れが飛んでしまいそうな

そんな

優しい笑顔だった。

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