チャンスの神はここにいる

周りの目は

あーぁメグちゃん
遠藤と別れたんだー……そんな感じ。

ここで立てつくと面倒なので
私はすぐ場所移動。

また最初に戻っただけじゃん
ここからスタート。

笑顔を見せようとしていたら

「ついでにこれ、似合うからかぶっとけ」

遠藤は頭からスッポリ入る猫のかぶりものを私に押し付けた。

「ずっとかぶっとけよー」
笑いながら遠藤は言い、周りのグラドルは私とかぶりものを見つめる。

「無視しなよ」
前列中央で杏奈ちゃんが言う。

当然無視だ。
だって
こんなのかぶってたら
顔が映んないもん。

白い猫のかぶりものを、私は涙目で触る。

顔が映らない。
意味がない

端っこに移動させられて
かぶりものさせられて

悔しい。

「塚本さんに言えばー。ちょっと塚本さーん!」
めったに話をしない隣の席の若い子が、私より腹を立てて塚本さんを呼ぶ。

すると
塚本さんは忙しそうにこっちに来て

「遠藤さんから話は聞いた。メグちゃんが今日それをかぶらないと、遠藤さん今日の収録やらないって。ぶち壊すって言ってるから……悪い。今日はそれでいってくれ」

って言われた。

自分の耳を疑う。

「やーだメグちゃん目立っちゃうー」
苦い顔する女子アナの隣で
勝ち誇ったように咲ちゃんが笑う。

その目はとっても意地悪く
悪意の塊。

「ふざけた女……」
杏奈ちゃんが綺麗に巻いた髪をかき上げ、前列中央で立ち上がろうとするのを「やめて」と後ろから止める。

舌打ちして振り返る杏奈ちゃんも迫力ある
隠しているけどさすが元ヤン。

「大丈夫。負けないから」
私は白い猫のかぶりものを頭から着け

本番一分前の声を聞く。

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