チャンスの神はここにいる
「今日はありがと」
シャッターの降りた商店街を、並んで歩く私達。
遠回りだけど
いつもひとりだから
明るい道路を選んで帰る私。
今日はひとりじゃないから
男の人と一緒だから
近道を歩ける
たったそれだけの事なのに
私の心は明るくなる。
最近
いい事ないから
こんな事でも幸せに感じてしまう。
亮平君は車道側に自然に立ち
私の歩幅に合わせて歩いてくれる。
自宅マンションまで近道で10分
明るく優しい声の亮平君との会話が楽しく
近道を通って失敗したって思うほど。
マンションが見える距離まできても
話が盛り上がり
私達は立ち話に夢中。
すると
亮平君のポケットでスマホが鳴った。
『ネタの練り直しが終わったから、早く来い!』
威圧感溢れる相方からの電話である。
「スゲー怖いの」
笑って私に言うので、私もうなずく。
「でもね、純哉は天才」
「そうなの?」
「うん。怖いけどね」
「絶対怖い。ハンパないよあのオーラ」
「そう?女子に人気だよ」
「怖くて嫌だよ」
マジ怖いから
私はカンベンだな。
「メグちゃんもタイプだと思ってた。純哉は人見知りが激しくて、初対面の人に打ち解けるのも時間かかるけど、メグちゃんとは仲良く話してたから嬉しかった」
はぁ?仲良く話してた?
どこが?
あれで打ち解けてたって?
難しい顔をしていたら「ごめん変な話して」って、納得してない子供をあやすように頭を撫でられた。
その部分だけ熱を浴びそう。