チャンスの神はここにいる
8時と30分。
私は純哉君がバイトしていた
高級なお店に足を入れる。
まさか
今日もカウンターの中で
シェイカー握ってないだろうね
場違いな高級店にコソコソと入ると、今日はカウンターの外側にお客さんとして純哉君が座ってた。
「遅い」
長い足を組み
私をチラ見して
そんなセリフを吐く男。
その横顔は端整で
眼鏡の奥の目が光る。
懐かしさで泣けてきそう。
純哉君の顔を黙って見るだけの私に
「俺の顔忘れた?」
やっと微笑み
クイッと顔を隣の空いてる席に向けた。
隣に座っていいですか?
ベタな携帯小説の題名みたいだ……。
「その口の悪さは忘れない」
強気で言いながら
純哉君の隣に座る私。
「素直だろ俺って」
「あーはいはい。すいません、カンパリオレンジお願いします」
「明日は仕事?」
「毎日が仕事っ。仕事に燃えてるの私」
仕事の鬼と呼んでくれ。
「人気出てきたな」
しんみりと言われ
ふと顔を見ると
純哉君は優しい顔で私を見つめる。
ヤバい。じんわりきそう。
ドS王子の笑顔は
ギャップありすぎて困る。