チャンスの神はここにいる

「ブルプラもすごい人気だね」

話を変えて聞くと

「おかげさまで売れてきた」

「昨日のテレビも見たよ。録画して必ず見てる」

「……俺もお前の見てる」

純哉君の静かな声が生演奏のピアノの音にかぶる。

胸が苦しい。

「どうして別れた?」

本題に入る……そんな感じ。

黙ってうつむいてると

「俺が関係してる?」

ズバリ言われた。

「亮平君から何て聞いたの?」

その名前を自分の口から出すと、まだ心の奥が切なく震える。

「ただ『別れた』って、だから俺もそれ以上は聞いてない」

「そっか」

「俺が絡んでる?」

琥珀色した液体が純哉君の喉に流れる。

「……絡んでない」

「ウソつくなボケ」

純哉君の手が私の頬を引っ張る。

「痛い」

「正直に言え。ウソツキはキツツキのヌリカベだぞ」

「そのギャグわかんない」

「俺もわからん」

「私のドラえもんのマネよりくだらない。痛いから離して」

「グラドルは顔が命」

「俺様ドS大魔王め」

「俺はドM」

そしてやっと手を離し

「お前の事がずっと好きだったドM野郎」

困った顔で言いながら
純哉君はグラスの中の液体を飲み干した。





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