チャンスの神はここにいる

サラッと
とんでもない事を言う男。

「亮平ってさ、けっこう鋭い」

綺麗に磨かれたカウンターにグラスを滑らせ、バーテンさんにおかわりの合図。

「俺の気持ちにすぐ気付いた。でも……あいつは知らん顔」

私の顔を見ないで純哉君は言う。

「優しい男だから、お前と俺の板挟みになって苦しんだかも」

「うん」

そんなタイプ。
いつも前向きで明るくて

でも本当は繊細で
人の気持ちを大切にする人

「バカなんだあいつ。ついでにへタレ。勝ち抜けなくて落ち込んで自信消滅。お前が自分より俺の方が好きかもしれないとか……バカな考えを持って……ひとりで頭を悩ませてグルグルしてた」

「うん」

そんな亮平君に
私は『嫌い』って言ってしまったから
私はもっと大バカ者。

「俺は最低だから、今がチャンスと思って言う」

純哉君は私をジッと見つめる。

「一度しか言わない」

彼の真剣な顔に私は背筋を伸ばす

「俺と付き合え」

俺様言葉とはうらはらに
純哉君は優しくカウンターの上にのせてた私の手に自分の手を重ねる。

大きな手に包まれる。

「大切にする。亮平には渡さない」

亮平君も言ってくれたよ
私を誰にも渡さないって

思い出して胸の奥が苦しくなった。
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