チャンスの神はここにいる

「でもこんな時に使えるコネとなる。親父に電話してさ、すぐ応援に来れる事務所のお偉いさんを呼んでもらった」

お笑い界最大の事務所
全国各地に養成所と劇場を持ち
ケーブルテレビも持っている
あの事務所の社長さんが

安東さんのお父さん?

「彼氏が来てくれてよかったね」

安東さんはそう言って
怒鳴り声のする楽屋へ入って行った。

そんな事って

あるんだ。

ホッとすると、さっきまでの恐怖が一気によみがえり膝から崩れてゆく私。

「メグちゃん」

「亮平君……怖かったよ」

すっごく
すっごく怖かったよ。

「無事でよかった」

亮平君はジャケットに包まれた私をきつく抱きしめた。

強く 強く
身体が壊れるくらいに

きつく抱かれた。

「会いたかった」

耳元でささやいた彼の唇が私の唇に重なる。

ずっと待ってたよ
ずっとキスしたかった

この胸に戻りたかった。

きつく抱きしめてもらいたかった。

何度もキスを繰り返す

誰に見つかってもいい

今まで会えなかった分のキスをしたかった。




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