チャンスの神はここにいる
控室には誰もいない。
みんな帰った?
いや荷物はあるな。
きっとあのままスタジオで、打ち合わせでもしてるのだろう。
いやー
けっこうな修羅場だったから。
てか杏奈ちゃん
さすが元ヤン
カッコよかった……じゃなくて、時間が無いっ!
「三分で終わるから」
亮平君に後ろを向かせ
私は自分のバッグに私物をガンガン突っ込み、スタジオ入りに着てた服を慌てて着る。
手を急いで動かしながら
脳内も動き
後悔の涙がまた出てきそう
だって
また私のせいで
亮平君が舞台に穴を開けた
ネタを飛ばすより最低な事実。
純哉君に迷惑かけた。
「亮平君ゴメンね。私って疫病神だよ」
スカートのファスナーを上げながら涙声で言うと、亮平君は心配そうにこっちを見る。
「また私のせいで……ごめん」
手を震わせながらブラウスのボタンをして
自分のジャケットを着てそう言うと
「それは違うよ」って返事をして、流れる涙を指で払う。
「沢井君が来てくれた」
「沢井君?」
「そう。コリアンダーの沢井君」
柔らかな声が魔法のように
私の張り詰めた心を溶かしてゆく。