チャンスの神はここにいる
「舞台に出る直前に、息を切らして走って来て『メグちゃんの彼ってどっち?』って俺達に聞いた」
「沢井君が?」
「うん。すごい顔だった。だから何があったんだろうって、俺が一歩前に出ると『メグちゃんがちゃんごらすにヤラれる早く行け』って言われて」
「すぐ出番だったんでしょ」
私のせいで舞台を壊した。
後悔しか心に浮かばない。
「純哉が言ってくれた『行け』って……」
純哉君が?
「『何とかするから早く行け』って言ってくれた」
仕事に厳しい純哉君が……
「そしたら沢井君がさ『どのネタやんの?』って急に言いだして、手汗ネタからのサンマネタって言うと『それなら大丈夫。僕はプルプラのネタは9割知ってるから。行こう純哉君』って……純哉の肩叩いて舞台に出て行った」
「沢井君が?」
驚きで涙も止まった。
「そう。純哉と沢井君で舞台で漫才やってる」
沢井君……スゴすぎる。
「だから大丈夫」
亮平君はそっと私にキスをする。
甘い甘いキスをする。
「でも走って戻るよ」
いつもの爽やか笑顔がそう言い、私の手を握って宣言。
「うん。思いっきり走る」
亮平君と一緒に
ずっと手を繋いで走るよ。