チャンスの神はここにいる

こんな状態でも
純哉君は冷静な声を出し
何事もなかったように平然とスコアさんに声をかけ、流れを確認する。

「純哉。ごめん」
亮平君が純哉君に言うと

「間に合ったのか?」って
ゆっくり私達の前に来て亮平君に聞く。

すると亮平君は「間に合った」って真剣な顔で言い、純哉君は大きく息を吐く。

「純哉君ごめんなさい。また……私のせいで大事な舞台をダメにした」
吐き出す言葉が重い。
何度私は純哉君に迷惑をかけるのだろう。

「ごめんなさ……」

「何だ?あのコメント」

私の謝罪と純哉君のツッコミが重なった。

「せっかく一位になったのに、あのインパクトも何もないコメント。スコアさんに突っ込まれても返しが甘くてダラダラ。ラストもダラダラ。気の利いたコメント考えてなかったのかよ」

舞台の袖で
怒涛のダメ出し。

「だって一位になるって思ってなくて……」

「なるって言ってたろ俺が。この俺が言ってたんだぞ。こ・の・お・れ・が!」

すごい勢いで上から威圧。

俺様ドS大魔王め!
テレビの顔と全然違うじゃんかよ!

「舞台はダメになってない」
今度は亮平君に向かってさりげなく言う。

「お前とやるよりウケた」

「まじでー?」

「俺、相方替えよっかなー」

「捨てないでー」

軽いノリで2人は会話し
ふと純哉君は私を見下ろす。

「間に合ってよかった」

眼鏡の奥で優しい目が笑ってる。

その時初めて
やっと心から安心して
ポロポロと涙が出てしまい

亮平君が気づいて
静かに私の肩を抱き
その温かさにまた泣ける。





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