チャンスの神はここにいる
「純哉。次のネタの用意しよう。メグちゃんこっち来て」
亮平君は私の手を握り
狭い舞台袖を歩いて客席の下に降りる。
客席の前の方に座ってる女の子達が「亮平だ」って眠気混じりの目を開く。
亮平君は彼女たちに笑顔を見せ
人差し指を自分の口元に押さえて、彼女たちの声を封じ込める。
「ここで見てて」
観客席に私を座らせた。
「メグちゃんの為に最高の舞台見せるから。ここで俺を見てて」
「うん」
「俺だけ見てて」
「うん」
「たまに純哉も見ていいから」
「うん」
笑って返事する。
「沢井君の顔は見なくていいから」
そこか。
なんだかんだで気にしてるのか。
「俺を見てて」
亮平君はそう言って
私の手を一度ギュッと握ってから
華やかな世界へ
行ってしまった。
見てるよ
大好きな亮平君を見てるよ。
あなたの姿を
ずっと目で追ってるから。
ずっとずっと
見てるからね。