チャンスの神はここにいる

「そして仕事の依頼」

「仕事?」

「俺のMVに出る約束だろ」

あ……安東さんのMV(ミュージックビデオ)に。

「ノーギャラでもいいくらいだな」

「それは困ります」
事務のお姉さんの反撃につい笑ってしまうと

「笑うな」って社長に怒られた。

すいません。

「メールにも仕事依頼の話が沢山来てる。恋人宣言の記事も明日スポーツ紙に出る。これから気をつけろ」
冷たい声を出す社長のスマホが鳴る

「はい。もしもし」
180℃化けた高い声で電話に出ると

「もう大人ですので本人に任せております」って舌打ちしながら指で強く叩く。

「マスコミに気をつけろ」

それだけ言われた。

別れろとは……言われなかった。

「あとは」
社長の追加言葉に背筋がピクリ

「総選挙一位。よくやった」

渋々だけど認めてやるよ……そんな感じで言われてしまい。胸が熱くなる。

そうだよ
一位になったんだよね私。

ジーンと感動。

「しゃちょーーう」
気がゆるみ大泣きの私を

「泣くのはもっと仕事が入ってから」って喝を入れられ、安東さんと事務のお姉さんに笑われた。

よかった。

終わりよければ
もうよろしい。
さりげなく
社長が二人のお付き合いを許してくれたよ。

昨日からどんだけ泣いてるんだろ私。

泣いて全てを流してしまえ。

そして笑って

亮平君に会おう。

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