チャンスの神はここにいる
争うようにふたりはホチキス止めされたA4の紙を眺め「これヤバっ」「スゲー」って声を出す。

そうでしょう
リストラだよ
パット禁止だよ。
生放送でポロリもあるかもよだよ

やっとわかってくれる人達に会えて、ホッと息をつくと

「スコアさんスゲー。レギュラーかぁ」

「だから社長の機嫌がよかったんだ」

「事務所の差ってここで出るんだ。やっぱり司会は【ちゃんごらす】ときた」

「ふん。大手事務所の力だろ」

ちょっと
ちょっと待って。
見る場所が違うんじゃない?

「純哉!新コーナーで新人お笑い勝ち抜き戦ってある」

「見せろ!」

この2人
私の心配なんて頭になさそう。

「もういい!わかった」
コーヒーを一気飲みし
乱暴に近くのゴミ箱に捨て、私は書類を奪い取る。

「私の事なんてどうでもいいんでしょう」

一気にそう言い
立ち上がり2人を見つめると

「そんな事ない。ごめん……つい」
「そうだ。どうでもいい」

見事に声が重なる。
もちろん
『どうでもいい』は、冷酷眼鏡男子である。

「さよなら」って顔も見ないで歩き出すと、自転車を押しながら彼らが必死で後を追う。

「そんなに怒るなって。悪かったゴメン」

「純哉が謝った。明日地球が引っくり返るー」

「地球は回ってんだよ」

「えっ?どっち回り?酔い止め飲まなきゃ」

「ウコンの力?」

「そっちじゃなくてー」

くっだらない内容が耳に山ほど届き
あまりにもくだらなくて

ついプププと笑ってしまうと

「本当にごめん。メグちゃんの話を聞くから」

亮平君は心から謝ってくれた。

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