チャンスの神はここにいる

「あ、事務所に言ってなかった」
ふと顔を上げて不安な顔をする亮平君。

また両方の事務所に怒られるよ。

「返事は?」
もっと不安な顔をして私に聞く。

「こんな場所で急にこんなプロポーズして、これならさっきの純哉君の企画の方がよかったよ」
怒った顔でそう言うと
人生終わったって顔をする。

そんな顔も好き。

私は笑いをこらえ

「嘘です。純哉君の企画より最高に驚いて最高に嬉しい。ありがとう」

これまた大きな声で返事をすると
あちこちから拍手が聞こえてきた。

あぁ恥ずかしい。
テレビ局の喫茶店でのプロポーズ
ネタにされるよ。

「やった!」
亮平君は大喜びで指輪をケースから出して、私の指にそっとはめる。

「サイズピッタリ」

「夜中に測った」

左手の薬指で小さなダイヤがキラキラ輝く。
シンプルなデザインだけど
とっても綺麗。

「ヤバい時間だ。ごめんメグちゃん」
ひとつのネタが終わったように
急に我に返って亮平君は謝る。

「時間なくてゴメン」

「家でじっくりしてくれてもよかったのに」

「ネタと同じで勢いが大切だろ」

プロポーズもネタも一緒かい。
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