チャンスの神はここにいる

どうしても納得できなくて
番組終わりにディレクターに詰め寄ると

『華がない』そんな返事が返ってきた。

「ごめんこれからロケあるんだ。杏奈ちゃーん用意できたら教えてー」

私から逃げるようにフットワークも軽く走って去って行った。

華か……華って

え?杏奈ちゃん?
杏奈ちゃんとロケって?

「ちょっとー!」
水着の上からバスタオルを羽織り、梯子を持った大道具さんの間を追いかけようとしていたら、バスタオルを引っ張られる。

「メグ見苦しい」
ひな壇で隣に座るレナが冷たい目で私を見ていた。

テレビ用の声とはオクターブ低いハスキーボイスに、追いかけようとしていた興奮する気持ちが下がる。

ボンキュッボンのナイスバディに黒のビキニが良く似合う。

ニプレスを貼っているとわかっていても
胸の中心である盛り上がりから男性は目を離せないだろう

「早く着替えないとスタイリストがまた嫌な顔するって」

「だって、杏奈ちゃんがロケ行くって知ってた?どしたの急に?」

「仕方ないじゃん」

「それなら咲ちゃんの方が……」

「じゃぁアンタも寝ればいいじゃん」

うんざり口調でキツく言われ
私は黙って目を丸くする。

「寝たの?」

「噂……ただの噂」

この世界
噂が多すぎる。

噂でもなんでも
結果を出せば勝ちなんだね。

しょんぼりとレナの後ろに付いて楽屋へ行こうとしていたら

スタジオの隅で
ひとりの男がひとりの男に怒られていた。

ふと足を止めてジッと見る。





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