チャンスの神はここにいる

自転車を押す亮平君の隣に立ち

夏の星座に見守られ
ふたりでゆっくり歩いて帰る。

「絶対、あきらめちゃいけない」

「うん」

夜風が心地よい。

「頑張れない時は頑張らなくていいけど、頑張れる時は一生懸命頑張ろう……って、わかりずらいな」

「ううん。わかるよ」

「自分の安売りはしないで」

「うん」

「よく噂で聞くけど……上の人と寝たり……自分からポロっと出したりしないで」

「うん」

生返事だけはするけれど
今後を考えたら
周りに影響されて
どうなるか自分でもわからない。

いや
きっとそんな度胸がないから
しない……じゃなくて
できないと思うけどさ

溜め息をしていると
亮平君の足が止まるので、私も足を止めて彼を見上げると

「約束して」

真面目な顔で懇願された。

「メグちゃんが、そんな男に抱かれるのは嫌だ」

「亮平君」

「前にメグちゃんの前からのファンって言ったのは、お世辞じゃないんだ。ホントにテレビで見ていて『この子の笑顔って可愛い』って思ってた。俺だけじゃない、他にもファンはいるから安売りだけはしないで欲しい」

「ありがとう」

あらためて言われると泣けてきそう。
ごめんね
そう言ってくれる人がいるのに
私はひな壇の端に移動させられ
画面に半分しか映らない立場。

情けないよ。

「純哉の目は確かだし、自分もそう思う」

ゆっくりと言われて

「約束する」って言葉に出す。

言霊さん

今日の決意を私は忘れない。
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