チャンスの神はここにいる

「あいつら評判悪い。態度も女癖も悪い」

「それって、どんな感じに……」

もっと掘り下げて聞こうと思っていたら

「早く着替えて集合して下さい。宣伝用スチール撮りまーす」

そんなスタッフの声にかき消され
来月からの出番を外れたレナは「また連絡するから」って、さっき皆にサヨナラ挨拶した時にもらった花束を抱え、楽屋から出て行ってしまった。

「えーっ?こんなの着るのぉ?」

甘ったれた新人の声を聴きながら
なぜか自分が取り残されたような

そんな気分になって
不安でしょうがない。

『頑張れ』
亮平君の声と顔を思い出し
深呼吸をひとつして落ち着こう。

スチール用に露出の多い
オレンジ色のおそろいビキニを着て撮影に備える。

もうそこには
ヤル気のない新しいプロデューサーがダルそうに立ち。
代わりにいつもの薄毛ディレクターがテキパキと指示を出す。

仕事に燃えてるな薄毛。

杏奈ちゃんとは別れたらしい。

早っ!

杏奈ちゃんは塚本プロデューサーの横で
綺麗に巻いた自分の髪をもて遊びながら、さりげなく彼の背中をタッチしてる。

わかりやすい。

実にわかりやすい。

次の目標へ狙いを定めて動き出す。
そこまで変わり身が早いのは好きだ。

自分じゃできないけど。

女子の方が
割り切って前へと進めると思う

薄毛ディレクターの背中が悲しい。

ドンマイ。

男子の方が未練がましそう。



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