チャンスの神はここにいる

「純哉君は?」

恥ずかしくて離れると
亮平君は何も気にしてない素振りで「あっち」と指差す。

亮平君の細く長い指先の奥には
ひと足早く入って来たOLさん達二人組に挟まれ、デジカメに収まる純哉君。

「グッズ販売してるけど、写真撮影の方が多いかな」
亮平君の説明を受け
純哉君の姿を見ると


詐欺だ……いつもと違う。

あの俺様冷酷男子が

王子様系
眼鏡萌え男子に変身している。

端整な顔立ちに微笑みをたやさず

「ありがとう」って
手を差し出すひとりひとりの女子と握手していた。

あの冷酷俺様野郎は
どこに行ってしまったのだろう。

「純哉はモテるんだ」

明るく言う亮平君の声が遠く感じた。

私の後ろからまた人が入ってきた。

邪魔になったら申し訳ないね。

差し入れの大福を亮平君に渡すと『ありがとう』って受け取ってくれて、私は微笑み王子の純哉君を無視しながら、ライブ会場である小さな扉の奥に入る。
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