チャンスの神はここにいる
ふたりのネタが終わり
挨拶をして
頭を下げて舞台から去る前
亮平君は
まっすぐ私の方を見ていた。
見えるの?私が。
私達からは見えるよ。
舞台に上がった演者はスターであり
ライトを浴びて注目を得てるけど
そっちから
暗い客席が見える?
キョトンとしてたら
亮平君は微笑み
あっという間に純哉君の後ろに続き
舞台からいなくなる。
私に?微笑んだ?
見間違い?
首を傾げていると
斜め前に座っていた男性が大きく伸びをして席を立つ。
帰るのかしら
あとラスト一組あるのに失礼な奴だな。
最後まで観ればいいのに。
ラスト一組はコントなので
バタバタと観客がいるにも関わらず
交番のセットが作られている。
その様子を見ている端で、さっきの席を立った男性の横顔が見えた。
げっ!
なんでここにいるの?
難しそうな顔をした
けっこうなイケメン男性は
新しくリニューアルされた番組のプロデューサー
杏奈ちゃんは薄毛から彼に乗り換え
仕事はヤル気なさそうで
だらしない雰囲気を持っている
塚本プロデューサーだった。