チャンスの神はここにいる
「プロデューサーは、ライブによく来るんですか?」
こちらから聞くと
塚本さんは正面を見たまま
「怖い先輩の命令」
ジャケットに口を寄せ
棒読みで答える。
「先輩ですか?」
「高校の時の先輩。スゲー怖くて今でも逆らえない。その人に『来い』って命令された。彼は出てないけどさ」
「誰ですか?」
「スコア中西」
「えっ?」
驚く私を、今度は楽しそうに横目で見て軽く笑う。
「『うちの新人に影響されて、お前もスイッチ入れろ』って言われた」
「スイッチ?」
「そう。俺のヤル気スイッチが、どこかに埋もれてるから、探して自分で押せって言われてる」
あのスコアさんが塚本さんの先輩とはビックリ。
「スコアさんもさー。本当は司会で番組に招きたかったけど、大手事務所には勝てなくてさー」
寂しそうに塚本さんはそう言った。
私にはわからないけど
色んな事情があるんだろう。
「やっぱライブいいよな」
「スイッチ押せそうですか?」
はっ!
プロデューサー相手に
つい生意気な口をきいてもうた。
地味に焦ってしまったけど
塚本さんは気にせず
「探せたかもね」
静かにそう答え
「さっきの奴ら観た?」
真面目な顔で私を見る。