チャンスの神はここにいる
さっきの奴ら
きっと亮平君と純哉君だ。
「今度の番組の新コーナーで、新人お笑い芸人がネタを見せて、7週勝ち抜いたら準レギュラーってコーナーがあってさ、今、それに出る奴らを探してる」
テレビの新コーナー
話を聞いて心臓ドキドキが加速する。
「先輩が奴らを推してた」
舞台の上では交番のセットが大きすぎるのか、きちんと設置できず、亮平君も出てきて手伝っていた。
「まだ粗削りだけど、あの子達……売れるよ」
塚本さんの低い声が
ナイフのように鋭く心に斬り込む。
ドキドキを抑えながら
なるべく冷静にゆっくりと私は聞く。
「プロの目から見て、そう思いますか?」
「売れる……でもまだ売れない。もう少し時間がかかる」
時間がかかってもいい
亮平君と純哉君が売れるのなら私も本望だ。
嬉しい。
あぁ
早く2人に知らせたい。
舞台の上でセットを無事設置し、笑顔で走る亮平君を目で追ってると
「つぶされなきゃ……売れる」
塚本さんが私に言い
風船がしぼむように
浮かれ気分がシュワシュワと小さくなってゆく。
「どういう意味です?」
「そのまんま。いくらあいつらが上手くても、大手事務所につぶされる可能性もある」
「そんな……」
「今年2年目でグイグイ出てきてる新人知ってる?【コリアンダー】って2人組」
名前だけ
聞いた事があるかも。
「これからメディアに出るよ。コンクールとかオーディションで、さっきの奴らの壁になる。まぁどっちが壁になるかはわからないけどさ」
「その2人が、大手事務所なんですか?」
「そう」いとも簡単な返事だった。