チャンスの神はここにいる

「舞台からメグちゃんが見えた」

優しい声で彼は言う。

「ずっと探した。そして見つけた」

人がいっぱいいるのに
客席は暗いのに
そんな余裕はないのに

見つけてくれたんだ。

やっぱり
ラストは目が合っていたんだね。

「今日はありがとう」

その言葉に胸が熱くなり
さっきまでの苦しい気持ちが
一気に私の中で弾け出す。

「亮平君」

「何?」

「……ハグして」

泣きそうな声でつい言ってしまってから
急に我に返る。

「ごめん冗談。早く純哉君の元に……」

早口でハグ発言を否定する私を、亮平君は強い力で肩を抱き、駅の本当の隅っこにグイグイと引っ張って



優しく

私を抱きしめてくれた。

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