チャンスの神はここにいる
私達の後ろの方で
『うわっ』と冷やかすような
嫌味のある声が聞こえた。
だよね
こんな公衆の面前で路チューとは。
私もいちゃつくカップルを見て、いつも苦い顔をしていた。
恥ずかしいって
人が見てるのに信じられない……って
そんな事をしている自分にビックリだけれど、亮平君の腕の中は温かく、その唇は柔らかく優しい。
「とっても、カッコ悪い話をしようか」
私の額にコツンと自分の額を重ね
亮平君は甘い声を出す。
「男の見栄の話。怒らないで聞いて……ってか、家まで送る!」
そう言い切った彼は私の肩を抱きながらポケットに直接入っていた小銭を取り出し、ここから3駅ほど離れた私のマンションまでの切符を販売機に入れて素早い動きで2枚購入。
「ダメだって。早く戻らないと怒られる」
純哉君の怖い顔を想像してゾッとするけど
「今は……離したくない」
長い指を私の指に絡ませ
私達は電車に乗り込んだ。