チャンスの神はここにいる

「でも……あの、大手事務所の話もしてた」

水を差す話で申し訳ないけど
2人そろっているので
話をさせてもらおう。

「つぶされなきゃ売れるって。大手事務所は強いから、今年二年目で出てきた【コリアンダー】って人達を推していて、亮平君達の壁になるって」

正直に言うと
亮平君と純哉君は黙ってしまった。

「どうなるかはわからないって、塚本さんは言ってた。だからこの世界は面白いって」

思い出しながら言い
亮平君の横顔をジッと見る。

カウンターに頬杖を付きながら
亮平君はふと純哉君の顔を見て
純哉君の口角が上がったのを確認してから、自分もニヤリと笑う。

「そうだね。面白いね」

極上の微笑みで
彼は私にそう言った。

そこで笑顔?

キョトンとしていると
カウンターの向こう側で「最高に面白い」純哉君も笑ってる。

「俺達はつぶされない」
亮平君は言い
隣に座る私の髪をくしゃっと撫でる。

「俺達がつぶせばいい。俺達があいつらの壁になる」

キラキラと光る酒瓶の前
純哉君はオーラを放ちながらリキュールをチョイスし、リズムよくシェィカーに入れる。

「俺達は負けない。大手事務所なんぞ怖くない」

両手を腰に回し
カウンターの中で
上から目線で不敵に笑う
美しい顔した俺様野郎は

どっからみても

魔王様。

グルグルと背中に風を背負ってる
その邪悪なオーラは

ハンパなく

怖い。

昨日見た
ファンに優しい王子様顔はどこにも見えんわ。

< 66 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop