チャンスの神はここにいる








  ほろ酔い加減で

好きな人と手を繋いで歩くって

素敵やん。



 場違いなショット・バーも楽しかった。

もはや魔王キャラの純哉君と
エッチ禁止令にショックを受け
テンションただ下がりの亮平君と楽しい時間を過ごし
魔王様にさよならをして

店を出て二人で歩く。

もう時間も遅いし
帰らなければいけないのだけど

お互い
離れたくなくて

ゆっくりゆっくり
家まで遠回り。

中学生の恋愛みたい。

「純哉君のバーテンダーって似合うね」

「うん。人間観察できるから本人も気に入ってる」

「そーいえば、亮平君のバイトって何?」

「大きなバイキングレストランで、厨房の下働き。ひたすら皿を洗って拭いて……たまにサラダの盛り付け。以上」

「人間観察できないね」

「皿を洗いながら心の中を無にする。精神修行の場」

「お坊さんみたい」

私が笑うと彼も笑う。

ただ

それだけで幸せ。

「そこのレストランとさっき行ったショット・バーの経営者が同じで、純哉の親戚なんだ。応援してくれていて『好きな時に入れ』って、言ってくれるから感謝してる」

「ありがたいよね」
私の働くお弁当屋さんもそうだから
とってもわかる。

「かと言って、いつも入るとバイト先で心配されるんだ『売れてないなー』って」

口調が悲しくて
また笑ってしまう。

語り上手だなぁ。
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