チャンスの神はここにいる

「華がないって……言われちゃったんですよー」
作業をしながら
売れっ子萌香ちゃんの人工的な顔写真を見て
また溜め息。

『あたりまえぢゃん。いじってるもん』
アロエジュースを小さな口でチューっと吸いながら
去年本人から教えてもらった事実。

いじってもカワイイし。

「上手い事言うね」
事務のお姉さんに言われて、ムッとする私。

「座布団一枚」

社長まで言うか。

事務所の時計を見ると5時になったので
私はティッシュを蹴散らせ
背中を伸ばし椅子から立ち上がる。

「まだあるよー」
お姉さんに引き留められたけど

「5時だから社員は帰りまーす」ってOL気分で言い、荷物を持って頭を下げる。

「メグ……」

社長の真っ赤な唇が私の名を呼ぶ。

「明日の予定は何だ?」

迫力あるわー。

「明日とあさっては何もないので、バイトです。その次はテレビの二本撮り」
セリフも無い
ひな壇グラドルですけどね。

「華……見つけろよ」

「華?」

「同じ花なら、バケツの中でそれぞれがキレ―だね―……なんて、すっとボケたセリフ言ったらブッ殺すからな。人と比べてナンボなんだ。Only ONEよりNO,1になれっ!」

すまっぷファンを敵に回すようなヒステリック発言を背中に残し、私はトートバッグを手にして事務所から逃げた。


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