チャンスの神はここにいる
「自信を持て」
その後ろで仁王立ちになり
純哉君が鋭く言う。
二人の愛情と励ましをヒシヒシと感るわ。
そうだね。
泣いても笑っても本番はやってくる。
逃げないで
自分なりにヤルしかない。
って決意したはいいけれど。
5秒の自己紹介。
どう生かす?
「本番5分前」
スタッフが叫んでる。
ヤバいヤバい。
ネームプレートが汗ばんでしまう。
みんな胸の谷間につけたり
肩につけたりしてる
『目立たないように目立て』
純哉君の声が脳内に冷たく響く
私は今日の髪形がポニーテールだった事を思い出し
うなじのピンを外して
頭のてっぺんにネームプレートが立ってるように装着し、5秒の自己紹介を考える。
5秒……5秒。
ちゃんごらすがスーツ姿で前に立ち
一生懸命頭を悩ます私を
舐めるようにスキンヘッドの方が見ていたけど
私はその不吉の前兆ともいえる
嫌らしい視線には
気付かなかった。