チャンスの神はここにいる
彼の目が私の顔から胸元に行き、それを自分で戒めるようにまた目をそらし「ケガしませんでした?」って顔を赤らめ私に言う。
近くで見ると
ちょっとくせっけの柔そうな髪。
怒られていた時はナヨナヨ印象だったけど
肩幅もあるし声も綺麗。
黄色いチェックのシャツの中には黒Tシャツ。
ユニクロリラコが長い足によく似合う。
好印象だけど
なんで生理用品?
お尻から出血した?
痔ってやつ?
言葉もなく顔を見てると
「あ、その違うんです。罰ゲームみたいなもんで、先輩に言いつけられて、あの、教えてもらえますか?」
必死な形相で私に訴える。
「怪しいもんじゃないんです。僕はあの……」
いや
かなり怪しい。
「新人の芸人さんですよね」
つい言うと
ひまわりのような笑顔を私に見せた。
「そーです、そーなんです。知ってました?うわぁ最高だ。初めてです」
彼はひとりで生理用品の棚の前で感動し、手を差し伸べたのでこれはヤバいと私も焦る。
「違うんです、ファンとかじゃなくて。同じ番組出てたんです。そこでアナタが相方さんに怒られてるのを見ていて、印象に残っただけ」
一気に言うと彼のテンションがグッと下がるのが見えた。
ごめん。
隠れファンだと思ったんだよね。
気持ちわかる。
否定してスマン。
「そうか、あれ見られてた」
アハハと笑うその声は気持ち虚しい。
話を変えてあげなきゃ。