チャンスの神はここにいる

「放送が終わったら『どうしても顔が見たい』って大騒ぎ」

「だから来てくれたんだ」

「真剣な顔で『心細くて泣いてる。顔が見たい』だって」
思い出したように笑う純哉君。

コーヒーの香りがツンとくるのか
目が潤んできてしまう。

ありがとう亮平君。

「俺達も頑張って勝ち抜く。そして共演者になる」

「うん」

「昨日の番組も悪くなかった。大丈夫。気にするな」

上から目線だけど
きっとこれが純哉君の思いやりなんだろう。

「もう6時か……そっちは仕事?」

そうだ仕事だ。
一気に目を覚ます。

「海の家で撮影会があるの。9時までに事務所に行く。純哉君達は?」

「先輩の営業に便乗して、ネタをやらせてもらう予定。亮平を起こさなきゃ」

「寝不足じゃない?大丈夫?」

「天才に不可能はない」

出た。俺様大魔王。

ふと
亮平君が言ったセリフを思い出し、純哉君にぶつけてみる。

「純哉君は天才だって、亮平君が言ってたよ」

純哉君に言うと、返事はない。

あれ?
俺様大魔王なら『当たり前だ』って高笑いすると思ったのに。

純哉君は亮平君に近寄り
頭を一発叩いて起こす前に
そっと私に教えてくれた。

「天才は亮平の方。こいつは本当の天才」と……。






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