その一瞬さえも、惜しくて。
彼の存在と奴の存在と。
体育教官室の窓を開けたら
夕暮れの景色がいつも広がっている。
遠くのグラウンドから小さくなった人影をぼんやりと見詰める。
あぁ、奴もあの中で声を出して
ボールを追い掛けているんだろうか。
何が楽しいんだろう、
どうしたらそんなに夢中に…
「…ひかり?!」
「あっ、え、ごめん!なに?!」
どうやらさっきから陽太先生に
呼ばれていたみたいで。
後ろを振り向けばいつまでも
笑顔の陽太先生がいた。
「お前ぼーっとしすぎだよ。
さっきからずぅっと呼んでんだぞ。」
「ごめん、先生、どうしたの?」