その一瞬さえも、惜しくて。

湿気のせいで、髪の毛がうねるからか
彼女は髪の毛をひとつに束ねていた。


涼しそうな首筋が
僕の心を、くすぐらせた。




彼女が、こんなにも真剣に
ペンを握っているところ初めて見たかもしれない。


左利きなんだ、とか。

流れてくる髪の毛を耳にかけた、とか。

高くも低くもない咳払いの声が
可愛い、だとか。



そんなどうでもよいことばかり
僕は考えてしまっていた。


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