その一瞬さえも、惜しくて。
「じゃぁ、先生。
わたし先に帰るね。」
そう言うと、先生はわたしの方へ振り返った。
「おう、ひかり、気をつけろよ。
またな。」
そう言って笑いながら手を振る先生の薬指を
わたしは見逃さなかった。
うん、わかってる。
わかってる。
自分でこの道を決めたんだから。
先生がわたしの目の前からいなくなる程
辛いものはないの。
だから、お願い。
このままでいさせて。
わたしは、ずるいですか?
先生。