その一瞬さえも、惜しくて。
揺れる心。
わたしは不意に、永嶋に抱きしめられていた。
「ちょ、何してんのよ!」
離れようとしたけれど、抱きしめる腕の力が
あまりにも強くてわたしは諦めた。
「ごめん、俺、すげーひかりが好きなんだよ。
だから、放って置けない。
全部じゃなくていい。少しずつ、ひかりのこと教えてくれないか?」
今まで見たことのない永嶋の切ない瞳が私を捕える。
陽太先生以外の男からこんな風に抱きしめられたことなかった。
ふと、陽太先生の笑顔が浮かんだ。
その瞬間わたしは永嶋を突き放していた。