その一瞬さえも、惜しくて。

「どうしていつも外ばかり見てるの?」



彼女の名前を呼ぶわけでもなく

気を付けてね、と優しい声を掛けるわけでもなく



いきなり
気になっていたことを口に出していた。



そんな僕の問いを聞いて
鳴瀬ひかりは立ち止まって、振り向いた。


正面からみても鳴瀬ひかりは
綺麗だった。

表情ひとつ変えもしない、笑いもしないのに
何かを抱えているその顔を
綺麗だと思ったんだ。






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