その一瞬さえも、惜しくて。
僕は、思い切って勇気を振り絞って
声を掛けてみた。
すっと、左の方へ顔を向けて。
「鳴瀬、おはよう!」
僕が声を掛けた瞬間、彼女はバッグに
かけていた手をぴたっと止めた。
それと同時に教室でざわついていた
空気が一瞬で無くなった。
さっきまで声を掛けていた
三枝と小林も、振り返ってこちらを見ていた。
それも唖然とした顔で。
あれ、自分はおかしなことしてしまっているんだろうか。